不妊かどうかつきとめるホルモン検査
不妊症かどうか調べる検査15・甲状腺ホルモンと副腎皮質ホルモン負荷テスト
前回の続きです。
参考書籍は「看護に生かす検査マニュアル」「不妊治療 体外受精のすすめ」などです。
甲状腺ホルモンと副腎皮質ホルモン負荷テスト
甲状腺ホルモンと副腎皮質ホルモンの負荷テストは、
ホルモン測定で異常が見られた際に原因を突き止めるために行われます。
ホルモン分泌過剰が疑われる場合には分泌抑制試験を、
ホルモン分泌不全が疑われる場合には分泌刺激試験を選択します。
分泌機能に対する負荷を与えることで、
甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンを分泌するまでの経路のどこに
問題があるのか鑑別できるのです。
「不妊治療 体外受精のすすめ」によると、
不妊症を患う女性の10人に1人が潜在性甲状腺機能低下症であり、
さらに5人に1人は甲状腺自己抗体陽性と言われているそうです。
なお、潜在性甲状腺機能低下症と甲状腺自己抗体陽性については
投薬治療での改善が見込めます。
甲状腺ホルモンと副腎皮質ホルモンの異常を伴う病気
甲状腺ホルモンと副腎皮質ホルモンの異常を伴う病気の一覧です。
・甲状腺腫瘍
甲状腺腫瘍は悪性の場合と良性の場合があります。
甲状腺は喉全面に位置しているので、もし手で触れてしこりを感じたならば
腫瘍が疑われます。悪性か両性か検査で確かめ、悪性であれば早急に
手術療法を受けましょう。
・橋本病(甲状腺機能低下症)
甲状腺ホルモンの分泌不全を起こす病気です。
大人の10人に1人の割合で発症する病気で、男女比は1対2と女性に多く見られます。
投薬治療の副作用や自己抗体陽性が原因で起こると言われていて、
薬剤性の場合は原因となっている薬剤の使用を中止すれば改善します。
原因不明の場合も、ホルモン薬で補えば甲状腺ホルモン不足を補って
不妊治療に進むことが可能です。
・バセドウ氏病(甲状腺中毒症)
甲状腺機能亢進症の一種で、特に有名なのがバセドウ病、
バセドウ氏病などと呼ばれる甲状腺中毒症です。男女比率は1対5と
圧倒的に女性に多いところが特徴です。
罹患率は200人に1人程度と多い分臨床データの蓄積が多く、
ある程度治療方法は確立されています。
手術療法、投薬療法、放射線療法が選べますが、
将来の妊娠を見据える女性は放射線療法を避けるようにしてください。
・クッシング病
指定難病のひとつクッシング病では、顔が満月のようにぱんぱんになったり、
肥満になったりという症状が現れます。
下垂体性ACTH分泌亢進によって副腎皮質ステロイドホルモンのひとつ、
コルチゾールが過剰分泌されるのが原因です。
治療には下垂体へのアプローチが必要です。
・副腎腫瘍
副腎は副腎皮質と副腎髄質に分かれます。
このいずれかに腫瘍ができた影響でホルモン分泌に異常をきたすことがあります。
腫瘍が良性か悪性かで危険度が変わります。
投薬療法、手術療法、放射線療法などから治療方法を選択します。
この治療についても、放射線療法には妊娠に対する悪影響が予想されます。
・アジソン病
指定難病のひとつ、原発性慢性副腎皮質機能低下症「アジソン病」は遺伝の影響があると考えられています。つまり、先天性の症状のケースが多いということです。
・副腎機能不全
原因不明の副腎皮質ホルモン欠乏の場合も病名は
「副腎機能不全」になるかと思います。治療が難しいホルモン不足、
原因疾患の特定や治療が難しいホルモン不足は、
基本的にホルモン薬によって不足を補うことで不妊治療を可能にするという対策が
とられます。
私の知る神戸ARTレディスクリニックではというと、病気をおしてまで
不妊治療を行うように医師が患者を誘導したりはしません。
なぜなら、不妊治療はそういうものではないからです。
内分泌系の異常を放置してホルモン薬でホルモン不足を補うことで、
不妊治療は可能になります。
しかし、それはその後の健康を補償する意味ではありません。
あくまで不妊治療が可能になる、妊娠できる可能性が生まれるというだけなのです。
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