不妊をまねく薬、抗精神病薬の続き

薬剤性高プロラクチン血症vol.12-抗精神病薬05

不妊症を招く薬剤のお話第12弾、抗精神病薬の続きをレポートします。

今回は抗精神病薬の一種、ベンズアミド系に属する

「スルトプリド」「スルピリド」「ネモナプリド」についてです。

抗精神病薬としてはあと、その他に分類される薬剤が続きます。

名称を挙げてしまうと今回の要点がぼやけてしまうので、

気になる方は末尾のリストをご覧いただければと思います。

それでは、今回もシンプルに進めていきます。

スルトプリド

用途:統合失調症の治療薬、ドパミン受容体遮断薬です。

躁病、統合失調症の症状である躁状態の興奮および幻覚、

妄想を抑える効果が期待できます。

ただし、自殺念慮を示す患者に対しては症状が悪化する恐れがあるため、

症状に合わせて的確に処方する必要があります。

副作用:主な副作用は錐体外路症状、悪性症候群、高プロラクチン血症、

麻痺性イレウス、けいれん、遅発性ジスキネジア、QT延長、心室頻拍、

無顆粒球症、白血球減少、肺塞栓症、深部静脈血栓症、パーキンソン症候群、

月経異常、乳汁分泌、男性における女性化乳房、射精不能などです。

悪性症候群では死亡例もあるとのこと。

強い鎮静作用がある反面、衝動を強める方向で働くケースも確認されており、

それが自殺念慮のある患者では自殺行動を後押しする結果につながったものと思われます。

主作用は抗ドパミン作用であり、妊娠を目指す女性、妊娠中の女性、

授乳中の女性は、いずれにせよこの薬剤の服用は避けるようにしましょう。

スルピリド

用途:胃潰瘍を改善したり、うつ病や統合失調症の症状を改善したりするお薬です。

胃潰瘍に対しては胃の粘膜に対する血流改善による回復力の向上で胃潰瘍の治癒を目指します。うつ病に対しては脳の働きを助けて気分を前向きにし、症状の改善を目指します。

統合失調症に対しては、脳の働きを助けることで情報伝達系の機能を回復させ、

混乱を抑えて回復を目指します。いずれもドパミン抑制に依存する作用です。

副作用:主な副作用は生理不順、乳汁分泌、月経不順、男性の女性化乳房、

パーキンソン病様症状、遅発性ジスキネジア、悪性症候群、けいれん、

無顆粒球症、白血球減少、不整脈、肝障害、静脈血栓症、肺塞栓症、錐体外路症状などです。

男性の長期服用で貧精子症、精子無力症、精巣の萎縮傾向が確認されたケースでは、

スピルリドの服用中止によって緩やかに症状が改善していったと記録されています。

ネモナプリド

用途:統合失調症や躁病などの治療に用いられるドパミン受容体遮断薬です。

気分を落ち着ける作用があります。脳の働きを改善し、

現実の正しい認識を助けます。幻聴、幻覚、妄想、思考や感情のコントロールが

うまくいかなくなるのは脳の働きが混乱している証拠ですが、

ネモナプリドはドパミンの作用を抑えて脳の情報伝達系の混乱を抑え、改善します。

ネモナプリドは特に妄想、幻覚、幻聴、混乱、興奮といった

陽性症状の改善効果が期待されるお薬です。

副作用:副作用のサインとして多いのが手の震え、身体のこわばり、

つっぱり、口の渇き、尿が出にくくなる、便秘、目のかすみ、立ち眩み、

動悸などだそうです。

悪性症候群、無顆粒球症、白血球減少、遅発性ジスキネジア、

肝障害、静脈血栓症、肺塞栓症などの重い副作用では命の危険を伴います。

異変に気付いたらすぐに服用を中止し、医師に相談するようにしましょう。

また、女性、男性ともに高プロラクチン血症による不妊症を招く危険がありますから、

精神科や心療内科を受診する時点で、子どもが欲しいかどうか、

ご自分の将来についてよく考えておくことをおすすめします。

今回はここまでです。

精神病でお悩みの方だけでなく、胃潰瘍に悩まされている方も、

治療の副作用で不妊症になる可能性があることが分かりますね。

お心当たりがある方はご注意ください。

次の薬剤性高プロラクチン血症のレポートは「アリピプラゾール」からです。

● 精神神経用薬

・ 抗精神病薬

フェノチアジン系:クロルプロマジン、ゾテピン、チオリダジン、レボメプロマジン

ブチロフェノン系:チミペロン、ハロペリドール、ブロムペリドール

イミノジベンジル系:クロカプラミン、モサプラミン

ベンズアミド系:スルトプリド、スルピリド、ネモナプリド

その他:アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、ピモジド、ペロスピロン、リスペリドン

・ 抗うつ薬

三環系:イミプラミン(トフラニール)、クロミプラミン(アナフラニール)

四環系:マプロチリン(ルジオミール)

その他:トラゾドン(デジレル、レスリン)、パロキセチン(パキシル)、フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)、セルトラリン(ジェイゾロフト)

・ その他

エチゾラム(デパス)、チアプリド(グラマリール)、トフィソパム(グランダキシン)

こちらのリストは福岡県薬剤師会のレポートに準拠します。参考はこちら。

https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/26.pdf#search='%E8%96%AC%E5%89%A4%E6%80%A7%E9%AB%98%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%E8%A1%80%E7%97%87+%E5%8E%9F%E5%9B%A0+%E8%96%AC'

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30代不妊治療について思うこと。不妊治療を知り、妊活から体外受精や顕微授精についてまで、自分のペースで調べていきます。