過剰分泌が妊娠に支障を
薬剤性高プロラクチン血症vol.18-抗精神病薬11
薬剤性高プロラクチン血症は、統合失調症や胃潰瘍などの
治療を目的として投与された薬剤が原因で引き起こされる副作用のひとつです。
プロラクチンはホルモン物質の一種であり、過剰に分泌される状態が続くと
妊娠に支障をきたします。
「高プロラクチン血症」と不妊の関連性についてもっと詳しく知りたい方は
私の知っているクリニックの情報も参考になるかと思います。
当ブログでは薬剤性高プロラクチン血症を引き起こす薬剤のリストを参照し、
特に種類が多かった精神神経用薬のレポートを続けてまいりました。
薬剤ひとつひとつを調べてきたためずいぶん時間が
かかってしまいましたが、精神神経用薬のジャンルに関してはついに今回で終了です。
●精神神経用薬の分類
・抗精神病薬
フェノチアジン系、ブチロフェノン系、ベンズアミド系、その他
・抗うつ薬
三環系、四環系、その他
・その他
この分類表の最後、「抗精神病薬」とも「抗うつ薬」とも異なる
「その他」とされているお薬をレポートします。(分類および薬剤リスト参考:福岡県薬剤師会)
エチゾラム(デパス)
用途:チエノジアゼピン系の抗不安薬と呼ばれるお薬のひとつで、
比較的作用がおだやかなため多くの診療科で処方されています。
神経症、心身症、不安神経症、パニック障害、自律神経失調症、
更年期障害、鬱病、不眠症、睡眠障害を伴う統合失調症、躁病、
緊張型頭痛、頚椎症、腰椎症、肩こり、けいれん性疾患など幅広い病気に有効です。
副作用:脳神経のホルモン物質受容体に作用する仕組みから、
期待できる効果の分だけリスクがあると理解すべきでしょう。
主な副作用として注意喚起されているのは眠気、めまい、
注意力の低下であり、エチゾラム服用時には車の運転や機械の操作は
避けることとされています。
そのほかまれに起こる副作用としては、依存、興奮、息切れ、頭痛、
頭重感、生理不順、乳汁分泌などがあります。
乳汁分泌は血中プロラクチン濃度が極端に高くなっている証拠ですので、
薬剤性不妊のサインとしてご注意ください。
※抗不安薬は精神安定薬もしくは緩和精神安定薬とも言い換えられます
チアプリド(グラマリール)
用途:ドパミン系神経遮断効果があるお薬です。
脳梗塞後遺症やジスキネジアを始め、さまざまな精神症状の治療に用いられます。
副作用:チアプリドで起こる副作用の中では、
ねむけ、めまい、ふらつき、手の震え、口の渇き、生理不順、
乳汁分泌、高プロラクチン血症などの症状が比較的多いようです。
チアプリド服用期間中に乳首のいたみを感じたら危険信号だと言われています。
できるだけ早く医師に相談してチアプリドの服用を中止するか、
治療に用いるお薬を変更しましょう。
ごくまれに起こる副作用としては、悪性症候群、重い不整脈、
昏睡、けいれん、錐体外路症状などが指摘されています。
※チアプリドは第一世代の抗精神病薬のひとつです。
なぜ福岡県薬剤師会のまとめでは「その他」に分類されているのか謎……。
※ジスキネジア:手足や身体、舌、口周辺の不随意な異常運動のこと
トフィソパム(グランダキシン)
用途:ベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。自律神経失調症、
更年期障害、むち打ち症、卵巣欠落症状などの治療に用いられます。
副作用:ねむけ、めまい、ふらつき、口の渇き、吐き気、食欲不振、
便秘が主な副作用で、そのほかに依存性や高プロラクチン血症が指摘されています。
作用時間は6時間以内と比較的短いお薬です。
精神神経用薬はこれまでにとりあげたお薬ですべてではありません。
世界にはもっともっとたくさんの精神神経用薬が存在します。
精神に作用するためには必ず脳神経へダイレクトに働きかける
薬理作用を持っているのです。
精神神経用薬は必ず肉体にも深く影響するということを、
ぜひ覚えておいていただきたいと思います。
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