30代後半からの不妊治療
高齢妊娠を目指す女性の場合、不妊治療はびっくりするような勢いで
一足飛びにステップアップしていきます。
20代で始める女性については
「タイミング法から徐々にステップアップしていきましょう」と
提案されるケースがほとんどだと思います。
でも、女性の体は妊娠できる期限が決まっていますから、
リミットが近づいている30代後半女性には
最初から体外受精を進められたりするのです。
体外受精はあらゆる面でハードルの高い治療です。
顕微授精となればなおさら……。
費用の問題。体への負担の問題。
そして何より、夫婦が同じように力を注げるかどうか、
それを維持できるかという問題が出てきます。
私はできれば妊娠したいと思って産婦人科に相談に行きました。
しかし、説明を聞いてから治療開始までは想定外の時間を要すことになりました。
体質の不安があったので、排卵誘発剤の使用や採卵に抵抗を感じたためです。
排卵誘発剤と採卵の不安
不妊治療には「治療が妊娠能力を損なう」性質があります。
どういうことかというと、例えば排卵誘発剤のクロミッド(クロミフェン)などは、
何周期も投与を重ねていると子宮頚管粘液の状態が悪くなり、
フーナーテストで結果不良になる恐れがあるそうです。
また、採卵するタイプの不妊治療では内視鏡を卵巣まで通すわけですから、
子宮口を開き、卵巣からまだ排卵していない組織をちぎり取ることになります。
想像してみてください。
私たちの体にとっては自然に排卵し、月経を起こすだけでも大きな仕事です。
排卵誘発剤による強制的な排卵と、採卵による物理的なダメージの
ダブルパンチが積み重なるとどうなるか、わかりますよね?
結果として、不妊治療によって妊娠能力が完全に失われる
という事態になるかもしれないのです。
30代後半はすでに限界に近い段階ですから、
本来の力を温存することはもうそれほど重要ではないのかもしれません。
「もしかしたら奇跡的に自然妊娠するかもしれない」という思いと、
「やはり特定不妊治療しかないのか」という思いが対立して本当に悩んだものです。
できれば人工授精からという私と、体外受精からという医師
私はせめて人工授精から始めたいと主張しました。
医師は患者の意向を尊重するとおっしゃっていましたが、
年齢的に体外受精から始めたほうがいい理由を詳しく説明され、迷いが生じました。
「治療が成功した場合の出産年齢を考えよ」と。
不妊治療の先を見て計画を立てなければならない。
であるならば、治療そのものに割ける時間は本当に少ないのだと。
不妊治療はただの治療ではありません。
新しい命を生み出すための行為です。
治療を始めるとき、私たちは別の命に対する責任を自分自身よりも
優先する覚悟を持たなければならない。
目からうろこが落ちたような心地がしました。
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