不妊症の原因となる高プロラクチン血症とハーディ手術

下垂体線種とハーディ手術(線種摘除術)

当ブログ本来の流れに戻ります。

今回は不妊症の原因となる高プロラクチン血症、

その原因が下垂体線種である場合の治療法のひとつである

「ハーディ手術」について解説したいと思います。

●おさらい

プロラクチンは母乳の分泌を促すホルモン物質です。

プロラクチン分泌が亢進状態だと排卵が行われないため不妊症となります。

高プロラクチン血症はさまざまな原因が考えられます。

ホルモン物質の分泌をコントロールする脳下垂体に腫瘍があるケース。

何らかの病気治療で服用している薬剤の副作用で

プロラクチン高値になってしまうケース。

原因不明のケースなど。

脳下垂体の腫瘍を取り除く手術の名前が「ハーディ手術(線種摘除術)」です。

「ハーディ手術(線種摘除術)」とは

ハーディ手術(線種摘除術)は脳神経外科で行う外科治療の手法です。

なので、脳神経外科のサイトを参考にしました。

こちらのサイトでは手術中の写真も掲載されているのでおすすめです。

http://www.akita-noken.jp/pc/patient/disease/section21/id4204.php?type=

「ハーディ手術」という名前は、術式を完成させた医師の名前に由来します。

そして、手術に使用する器具の名前も「Hardy鏡」です。

経鼻内視鏡下下垂体線種摘除術とでも申しましょうか。

鼻腔内を経由して脳下垂体の腫瘍を「可能な範囲内で除去する」手術となります。

実際、山形県立中央病院では「内視鏡下経鼻的下垂体腫瘍摘出術」という

名称が使われているようです。

下垂体線種の治療に関する山形県立中央病院のホームページはこちら。

https://www.ypch.gr.jp/department/neurosurgery/topics10.html

秋田県立循環器・脳脊髄センターのサイトに紹介されている手順ではこうなっています。

1・鼻の粘膜を切開、剥離し、鼻腔の奥にある骨に小さな「窓」を開け、

さらに脳をおおう硬膜を切開する

2・内視鏡を差し込み下垂体線種を掻きだす腫瘍が硬い場合もあるが

その時は安全を保てる範囲で切除する

3・腹部の皮下脂肪を採取し、鼻腔奥の切除腔に詰める

4・髄液の漏出が多い場合は髄液を体外に流すチューブを留置して安静にする

という具合です。脳の一部を掻きだす、髄液が流れでる、

というところで私、ぞっとしました。背筋が寒いです。

が、この手術が可能なケースでは80%の割合で下垂体線種によって

出ていた症状が改善すると言います。有効な治療法というわけですね。

なお、森山記念病院にもこのハーディ手術に関する記述がありますが、

以前は上唇の裏側から副鼻腔を経由してアプローチしていたそうで、

現在の手法よりもリスクが高かったと考えられます。

下垂体腫瘍の発生率は年間で人口10万人あたりひとり。

森山記念病院での治療件数は年間10から20例程度とのこと。

森山記念病院のハーディ手術に関するホームページはこちらです。

https://trustedpituitarysurgeon-yamada.com/keibi/

不妊治療専門のクリニックは下垂体腺腫にどうかかわるのか

不妊治療専門のクリニックは脳神経外科ではないので、

脳を直接触るような検査や治療ができません。

ではどうかかわってくるのかというと、下垂体腺腫(下垂体腫瘍)の

主な症状であるホルモン異常によって不妊治療専門のクリニックの領域に入ってきます。

下垂体腺腫の影響で高プロラクチン血症になり、

排卵が起こらずに不妊症となっているケースは婦人科でも見つかることがあるのです。

この場合の治療は、脳神経外科で切除手術を行うか、

腫瘍を温存したままホルモン注射で人工的に排卵を起こすか、などの選択肢があります。

神戸ARTレディスクリニックの「脳下垂体の異常」に関するホームページ

https://www.ivf.co.jp/?page_id=54#A03

次回は下垂体腺腫の多様な症状についてもう少し掘り下げます。

よかったらお付き合いください。

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30代不妊治療について思うこと。不妊治療を知り、妊活から体外受精や顕微授精についてまで、自分のペースで調べていきます。