薬が不妊症を引き起こす理由
薬剤性高プロラクチン血症③胃潰瘍の薬が不妊症を引き起こす理由
前回の続きです。まずはおさらいから。
妊娠はホルモン値が正常なバランスで推移していて初めて成立します。
プロラクチンは乳汁の分泌を促すホルモン物質で、
高値が続くと不妊症の状態になってしまうのです。
薬剤が原因でプロラクチンが高値になっている場合を
「薬剤性高プロラクチン血症」と言います。
私の知る神戸ARTレディスクリニックで薬剤性高プロラクチン血症に関する
記述がありました。
https://www.ivf.co.jp/?page_id=54
不妊治療でお世話になるお医者さまと、他の病気治療でお世話になっている
お医者様をつなぐのは患者である“あなた”自身ということです。
前回のレポートでは胃潰瘍の治療薬に注目して具体的な薬剤名をピックアップしました。
その参考は福岡県薬剤師会のレポートです。
→
薬剤性高プロラクチン血症を引き起こす消化器官治療薬
●吐き気を抑制するお薬
イトプリド(ガナトン)
ドンペリドン(ナウゼリン)
メトクロプラミド(プリンペラン)
●H2受容体遮断薬
シメチジン(タガメット)
ニザチジン(アシノン)
ロキサチジン(アルタット)
●その他
クレボプリド(クラスト)
消化器系に対するものだけでも数が多いですね。
吐き気を抑制するタイプ、H2受容体を遮断するタイプ、その他と、種類もさまざまです。
これらはどのようにして身体に作用し、高プロラクチン血症、
ひいては不妊症を招くのでしょうか?
広島大学脳神経外科:
https://home.hiroshima-u.ac.jp/nouge/disease/pituitary/hyperPRL.html
https://home.hiroshima-u.ac.jp/nouge/
これだけで十分理解できる方もいらっしゃるかもしれませんが、
私はまだ疑問が残るところです。ドーパミンがプロラクチン分泌にどのような
役割を担っているのか、また、なぜ胃潰瘍の治療でドーパミンを抑える必要があるのか
掘り下げていきたいと思います。
ドーパミンとプロラクチン、胃潰瘍治療薬の関係
ドーパミンは視床下部から分泌されるホルモン物質の一種です。
ドーパミンはプロラクチン分泌に対して抑制的に働くため、
ドーパミンの分泌が正常に行われていれば、妊娠してもいないのに
プロラクチン高値になるような異常事態は起こらないのです。
妊娠できる身体、いわばニュートラルな状態を、ドーパミンの分泌によって
形成しているとも考えられますね。
しかし、そうすると、平常を維持するにはあえてホルモン物質を
作り出し続けなければならない、もしかして妊娠している時の
ホルモンバランスが「平常」になるようになっているのかな?
という気もしてしまいます。ちょっと不思議ですよね。
ドンペリドンなどの胃潰瘍治療薬を服用すると
ドーパミンの生成が阻害されてしまいます。
結果的に、高プロラクチン血症からの不妊症になってしまうというわけです。
卵巣、子宮、視床下部、脳下垂体はお互いにホルモン物質を通じて
情報をやり取りしています。
これをフィードバック機構と呼びます。
胃潰瘍治療薬の干渉は強力です。臓器によるフィードバック機構が
健常であっても薬剤の影響を免れるのは難しいでしょう。
また、リストにある薬剤はドーパミン分泌を抑制する機能をもって
消化器系に治療効果をもたらす設計になっているようです。
作用と副作用を切り離すことは不可能です。
基本的に薬剤性高プロラクチン血症は原因となっている薬剤の
使用を中止すれば改善しますので、薬剤の服用を中断するか、
種類を変更すれば問題は解決するはずです。
0コメント