消化器系の治療と脳の関係
薬剤性高プロラクチン血症④
前回までで、消化器系の治療薬がどうして不妊症をもたらすのかは
ある程度納得できました。
でも、なぜ胃潰瘍を治療したり、吐き気を抑制したりするために
ドーパミン分泌を抑制する必要があるのでしょうか?
薬剤ひとつひとつの作用機序を見てみましょう。
参考は製薬会社各社が公開しているデータです。
●吐き気を抑制するお薬
イトプリド(ガナトン):
ドーパミン受容体に作用してアセチルコリンの遊離を促進、
分解を抑制して消化管の運動を改善するお薬です。
ドーパミン受容体は脳の線条体、前頭前野、海馬、側坐核などに分布しています。
イトプリドの目的はドーパミンの受容と働きかけを
抑制することそのものではなく、その先にあります。
アセチルコリンもまたホルモン物質のひとつで、
副交感神経の神経伝達物質として働くのですが、イトプリドの作用で
アセチルコリンが増えると消化管運動が改善するのです。
そのため、悪心、食欲不振、吐き気や胸やけの改善効果を得られます。
ドンペリドン(ナウゼリン):
メトクロプラミド(プリンペラン):
ドンペリドンとメトクロプラミドも基本的にはイトプリドと
同様のドーパミン受容体ブロッカー(拮抗薬)です。
ただし、イトプリドと違い、ドンペリドンとメトクロプラミドは
ほとんど同様の薬として扱われている様子がうかがえます。
ドンペリドンとメトクロプラミドの違いに注目したレポートが散見されるほどです。
イトプリド、ドンペリドン、メトクロプラミドはいずれもドーパミン受容体拮抗薬
として働き、アセチルコリンを増量して消化管機能を改善、吐き気を抑えます。
ではそれぞれどう違うかというと、イトプリドはアセチルコリンの
遊離を促すと同時に分解を阻害します。
ドンペリドンとメトクロプラミドはドーパミン受容体と、受容体の引き金帯に
作用して消化管運動の改善と吐き気抑制を実現するのだそうです。
そして、ドンペリドンとメトクロプラミドでは、
どちらかというとドンペリドンのほうが処方される機会は多くなっています。
その理由は、メトクロプラミドによってパーキンソン様症状の副作用が出る
恐れがあるからです。
消化器系の治療に際して、特別な理由でもない限りは、
メトクロプラミドの服用は避けることをおすすめします。
服用するとしたら十分に注意してください。
食事からある程度時間が経てばお腹がすいて、食欲が増すこと。
食物を咀嚼したら消化管が上手に飲み下し、食道から胃へ、
胃から腸へと消化しながら運んでいくこと。
栄養を吸収すること。食べ物をおいしいと感じること。
これらは当然だと思われがちですよね。
でも、実は複雑な脳の働きが裏側にあるのです。
ちょっとした吐き気や食欲不振などはそれほど深刻な症状ではないものの、
治療にはそれなりのリスクが伴うのだということを
覚えておいていただければ幸いです。
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