精神科の治療と不妊治療

薬剤性高プロラクチン血症⑦精神科の薬

今回から薬剤性高プロラクチン血症のレポートは

精神科のお薬の範囲に突入します。

これまで取り上げてきた領域に比べて、ここからは格段にボリュームが増えます。

段階を踏んで薬剤それぞれにクローズアップしていくので、

毎回レポート末尾に薬剤リストを添えて進捗状況をお知らせするつもりです。

高プロラクチン血症と不妊症について確認したい方はこちらをご参考になさってください。

https://www.ivf.co.jp/?page_id=54

多くのレディスクリニックがそうであるように、

私の知る神戸ARTレディスクリニックも

ホームページで不妊症の原因についてある程度詳しく解説しています。

精神科の薬と言ったら「向精神薬」。向精神薬とは?

精神科で治療を受ける患者の方は多くの精神的な問題を抱えています。

うつ症状などはいわば脳の病気であり、その治療薬は必ずホルモン物質の

生産バランスに影響を与えます。

フランスの医学雑誌「Encephale誌」のオンライン版で以下のような

臨床情報が公開されました。2013年8月5日号と少し古い情報ですが、

ここ数年の医学界、特に不妊治療業界の動きを見るに、多くの医療者が

注目したものと思われます。

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高プロラクチン血症は、抗精神病薬による治療を受けた患者にしばしば認められるが、

なおざりにされている有害事象である。Besnard氏らは本レビューにおいて、

病院メカニズム、男女の臨床的兆候、および管理方法について概説した。

(以下は抜粋ではなく概要)

抗精神病薬は原則としてドーパミンD2受容体をブロックする。

すべての抗精神病薬がこの作用によって抗精神病効果をもたらすが、

一方でドーパミンはプロラクチン分泌を抑制する有為性を持つ。

つまり、抗精神病薬は基本的に高プロラクチン血症を惹起し得る。

ただし、D2受容体からの解離速度が速い薬剤については、解離速度が遅い薬剤よりも

血漿中プロラクチンレベルの増加が少ない。

なお、抗精神病薬による高プロラクチン血症は女性に比較的多く発生することが

分かっている。

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ここまで、Encephale誌はフランス語の雑誌なので、

日本の臨床情報サイトを参考にしました。気になる方はこちらをどうぞ。

https://www.carenet.com/news/general/carenet/35915

「なおざり」にされてきた精神科医療と不妊治療

精神科の治療には抗精神病薬が欠かせません。

なぜ抗精神病薬の副作用リスクが「なおざり」にされてきたのか、

その理由もやはり、Encephale誌オンライン版2013年8月5日号に盛り込まれていました。

医師たちはもちろん薬剤のリスクを把握しています。

もし本人や家族の申告があれば、不妊症リスクを高める種類の薬剤を

あえて処方したりはしないでしょう。しかし、問題は精神病患者自身の状態にあるのです。

重度の精神病患者には理性的な判断が難しく、また、副作用の認識や

申告さえできないケースが少なくないといいます。

そのため、患者に抗精神病薬による高プロラクチン血症などが現れても、

なかなか医師が把握できないのだとか。

心の問題が解消された時になって、副作用が明らかになり、

不妊症という新たな壁が精神病患者の前に立ちはだかる状況になるというわけです。

この問題を解決するには、全ての精神科医が抗精神病薬の副作用リスクをきちんと認識し、

いずれ妊娠を望む可能性がある患者、また、そのパートナーになり得る患者に対して、

できるだけ安全性を高めた治療を提供するように心がける必要があるでしょう。

今では薬剤性高プロラクチン血症に関する注意喚起が多くの機関からなされており、

2013年のころよりは多少なりとも改善されていると思われますが、

それでもやはりリスクはリスクです。精神病を患っている方ご自身はもちろん、

そのご家族やパートナーの皆さまもまた、治療に伴うリスクをしっかり調べて

備えることをおすすめします。

次からは抗精神病薬それぞれにクローズアップしていきます。

30代からの不妊治療や検査のことブログでつづる

30代不妊治療について思うこと。不妊治療を知り、妊活から体外受精や顕微授精についてまで、自分のペースで調べていきます。